責任

一見「責任」なんて言葉に縁がないように思えるこの職業。芸術表現の自由なんて事もごくごく当たり前のように言われているが、果たしてそうだろうか?
ただ好きなものを好きなように作っていればいいのか?自分の個性をただ表現していればいいのか?確かに好きな事をすればいい。自由に表現をすればいい。でもそれ以前に作り手としての「責任」を考えている人は今現在どのくらいいるのだろうか。
もっとはっきり言えば、交通費をかけて会場まで駆け付けて、なおかつ入場料を払って、長い時間じっと我慢(しなくていいけど)して見ているお客さんの気持ちをどこまで作り手側は考えている&のかという事だ。
以前マスコミに取り上げられていたが日本で芸術観賞(舞台、映画なども含む)をする人が減っているという。データはどうであれ、自分の周りにもそういう人はいる。これは作り手側にかなりの責任があるのでないか、私はそうとらえている。
自由、個性、芸術、表現という言葉を武器に、実際にはただの垂れ流し、もしくはただの露出に終始する「アートもどき」を何度も見て来た。アンダーグラウンドという言葉に保護された、居心地のよいアートシーン。はたまた出身大学を気にするだけのアカデミックに溺れた人間を目撃する事も多かった。
明日は我が身。自分はそんな風になっていないか、作品を作った後考えるのはいつもその事ばかりだった。アートや作品を作るという行為は別にアーティストだけに与えられた特権じゃない。 すべての人間に与えられた普通のことだ。その事を作り手自身がもっと真剣に自覚すべき時代にとっくに来ているのでないかと思う。そして何より受け手は作り手以上に多くの事を見ている。アーティストはうわべの自由よりも逃げずに作品で責任を取れ。これは自分自身への警告でもある。
畑中正人
http://www.hatanakamasato.net/