耳を守る。

最近気になることがあります。それは電車や路上でヘッドフォンをしている人が年々増えているような気がしていること。屋外での使用は特に安全性の面からも個人的にはあまりお薦めできませんし、電車やバスなどで聞こえる音漏れなどは時に他人への迷惑にもなります。しかし安全面やマナーに加えて気がかりなのは耳自体への負担です。私の思い込みなのか若い人の話し声がここ数年で大きくなっているような気がしています。偶然そういう場面に何度かでくわしたからそう思うのかもしれないし、単なる私の勘違いかもしれませんし、何より脅かす気も毛頭ありません。しかし行き過ぎた耳への刺激、中でも大音量で聞く事や長時間の使用は聴覚を劣化させてしまう原因のひとつになりかねません。私も職業がら仕方なくヘッドフォンで仕事をしなくてはいけないことがほとんどですが、ここ最近は出来るだけスピーカーを使用するかつての習慣に戻しました。私の場合は耳を酷使する仕事ですし、年齢と共に可聴範囲も絞られてくるので特に過敏になっているだけですが、普段からヘッドフォンをご愛用されている方はぜひ(!)ご自身の耳をいたわりながらこれからも音楽を楽しんで下さい(大きなお世話ですが)。
若干この話にも関連してくるのですが「PROSOUND 2009年4月号」(※1)に興味深い記事があったので、ご参考までに少し要約してお伝えします。ドイツに「ULTRASONE」(※2)というヘッドフォンメーカーがあります。既に欧米のプロエンジニアらの間で注目されている「ULTRASONE」は独自の技術で他社とは違うアプローチでヘッドフォン開発に取り組んでいらっしゃいます。無理矢理まとめると「人体への影響を考えた新しいヘッドフォン」といったところでしょうか。ここでいう「影響」とは主に電磁波のことです。彼らはULE(Ultra Low Emission)という電磁波を抑制する技術を搭載したヘッドフォンを開発しています。電磁波の人体への影響は日本でも時折話題になっていますが、ノルウェースウェーデンフィンランドの3ヶ国では1995年に「TC法95」が制定され人体の健康を害するおそれのあるプロダクトから出る電磁波に一定の基準を設けています。「ULTRASONE」創設者のフロリアン氏はヘッドフォン開発とは別に電磁波の研究会社も運営しており、先述の「TC法95」に際しヘッドフォンの電磁波測定を任されたことが新たなヘッドフォンのアイディアを生んだきっかけとなったそうです。さて問題のヘッドフォンからの電磁波についてですが記事によりますと、通常のヘッドフォンをアンプのボリューム約70%の状態で鳴らした場合の計測では、頭の周囲にパソコンのCRTモニターを4台配置しているのに匹敵する電磁波が出ているという結果が出たそうです。
この内容には私も正直かなり驚きました。既に携帯電話やらコンピュータやら日々電化製品に囲まれているのにも関わらず、おまけにヘッドフォンからも電磁波が出ているとは・・・。当然ヘッドフォンの個体差もあるでしょうし、その影響にも個人差があるでしょうからヘッドフォンの電磁波が一方的に危険だとは言い切れません。しかしながらこの測定結果を完全に無視することにも少々気が引けます。記事を読みながら普段仕事でヘッドフォンを使うと妙に疲れると感じるのは、もしかしたら音量や姿勢、労働時間のせいだけでもないのかも、という気がしています。「ULTRASONE」ぜひ近いうちに試聴してみて導入を検討してみようと思っています。
話が少し横にそれましたが、いま世の中には各メーカーから実に多くのヘッドフォンが発表されています。その種類やデザイン、性能や機能は日々進化しています。私は状況によってヘッドフォンの種類や使い方を変えていますが、それでもまだまだわからないことが多いですし、ましてや耳の健康ともなるとあまり気にしていなかったことも事実です。ということで長くなってしまいましたが、「耳の健康」や「ヘッドフォン」についてあまり意識されてこなかった方も、意識されてきた方も今一度見つめ直してみてはいかがでしょうか。
(※1)参考記事:PROSOUND (2009年4月号 / P118〜P121)
 PROSOUND ホームページ http://www.stereosound.co.jp/psweb/
(※2)「ULTRASONE」詳細 http://www.timelord.co.jp/


畑中正人
http://www.hatanakamasato.net/