16、17日と札幌ドームで行われたYOSAKOIのイベントに急遽、キーボード奏者として召集された。譜面は本番の数日前、リハは前日のみというスケジュールで行われた。動員人数は両日合わせて約7万人、その様子はNHK総合とBSで全道、全国放送された。踊子の人数も聞いた話では1万人という、とんでもない規模で行われたイベントの中で、一番冷めていたのはひょっとしたら自分かもしれない。自分の楽屋の周りにはK氏やY氏、H氏など著名人がいたせいもあったが、組織委員会の方々も含めて、まるで北海道の救世主のようにインタビューや解説をしている様子を見て、大きな疑問符。イベントの規模だけが話題となっていたようだが、実際にはイベントのしきり方に関してはずいぶんと穴だらけの部分ばかりだった。とにかく連絡系統は全く駄目で、何を誰に聞けばいいのかさっぱりわからない。その辺でスタッフらしく振る舞っている方々からの言葉は、「おはようございます」と「おつかれさまです」と「ちょっとわかりません」の3種類だった。
それはともかくとして、今回はYOSAKOIの感触を直接肌で感じるいい機会だと思い、演奏の依頼を受けた。しかし、演奏しながら、自分の目の前で踊っている大勢の人達を見ながら、これを「お祭り」として感じていいものかどうか困ってしまった。(というか一体何を、誰を祭っているのか?)楽しんでいる人たちは良しとしても、これを楽しんでいない(もしくは楽しめない)人達はYOSAKOIという世界の中で一体どういう扱いなのだろうか?北海道に住む人間としてYOSAKOIを心底楽しまなければならない義務もないし、批難していい権利もない。
でもソーラン節が北海道的だと一体誰が決めたんだろう。自分の生まれ育った浜頓別でソーラン節を聞いた事は一度もないし、ルーツでもない。
・・・本当に北海道から外に発信できるのはYOSAKOIしかないのだろうか?(というかそもそも北海道から何を発信するのか?)
そんなことをぼんやりと考えているうちに、演奏は終わっていた。
イベント終了後、何か空虚な気持ちを抱きながら冷房のききすぎた楽屋を出た。そして、廊下にほうり出されていたH氏の大きな弁当の残骸に目を止めながら、巨大化し続けるムーブメントとその熱気に追い出されるように札幌ドームを後にした。
畑中正人
http://www.hatanakamasato.net/