コペンハーゲン2日目。この日は何故か朝早く起床。しかもすごい暑さ。丁度、オットーや他に滞在しているダンサーたちも起床。ひとりは昨夜の公開リハですっかり大ファンになってしまったRENNIE MIRRO氏。彼は現在スゥエーデンで踊っていて(きっと)、歌手としても才能を発揮しているらしい(何故かこの日より我らから通称ぐっさんと呼ばれてしまった。雰囲気が似てる)。そしてもう一人は名前が不明なんだけど、イリとオットーがプログラムの一番最初に踊っている、CLAUDE BRUMACHON氏振付作品をフランスから教えに来ているダンサーで、フランスでもかなり有名らしい。で、ウチの嫁さんがいつの間にか朝一番で朝食の買い物に出かけ、合流時間はそれぞれ違いながらも食事開始。皆喜んで食べていた。が!今日はプレミア当日。みんなちょっと固い感じで、とっとと最終調整に出かけてしまった。我らはどうすることも出来ないので、街を探索する事に。まずは中央駅まで出かけ、中心部から南の方へと進んでいった。コペンハーゲンは小さな街なのでだいたい徒歩や自転車で見て回ることができる。その中で一番やっかいだったのがお金のレート。ドイツへ渡ってからはユーロと円とで計算することがほとんどなんだけど、ここデンマークではクローネ。んー、つまり物価がユーロよりもちょっと高めなんです。で単位が違うから、とにかく迷う。例えばサンドイッチが25クローネ。ドイツではだいたい3ユーロくらいで、日本では200円くらい(?)。値段を見ても5分は考えてしまう。で、結局高そうだから買わない、という具合になってしまう。 そうこうしている内にいい時間。再び電車に乗って一路会場のある海岸へ。とまぁこれから初演の事を書くぞ!という所なんですが、ちょっと長くなってしまうと思うので、この続きはまた明日にします。ごめんなさい!とりあえず初演日前半部のレポートでした!!
畑中正人
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コペンハーゲン2日目レポート第2弾です。会場へ向かい楽屋口に挨拶に行こうとすると何やら様子がおかしい。ずいぶん直前までリハをやっているようだし、オットーもただの慌ただしさではなかった。この時ははっきり何かわからなくて取りあえず会場入り。しかし午後8時開演のはずが8時になっても開場すらしない。これはどうも変だと思って確認したら、女性ダンサーのひとりが蜂に刺されて病院に運ばれたという。嘘みたいな話しだけど、丁度に楽屋挨拶に行く時出演者の人たちが入って来そうな蜂をずいぶん神経質に追い払っていたので、変だなーとは思っていたんだけど、まさかダンサーが刺されるなんて・・・。ちなみにこの日近くの海岸では発砲事件まであって(被害者は出なかったけど)、観客も結構困惑ぎみ。そういや、昨年のプレミアなんか野外ステージで で本番直前5秒前に雷雨だからなー。このフェスはハプニングが多いのだろうか。
とりあえず待つ事、約30分。ステージからは「ボレロ」らしき曲が聞こえてくる。おそらくこの演目に出る人が刺されてしまい、どうやら他のダンサーが急遽振付を覚えているらしい。とにかく遅れる事1時間。プレミア本番がスタート。今回のフェスの演目は5つ。まず始めはいきなりイリとオットーによる「LES INDOMPTES」。振付はCLAUDE BRAUMACHON、音楽はWIM MERTENS。とても短い作品だけどスピード感とソフトな動きのコントラストが素晴らしい。これはもともとイリとオットーのために振付られたのではないんだけど、2人がリンクした動きなんかは彼等特有の華麗なシンメトリーが色濃く出ていた。選曲は昨日の公開リハの時点では個人的に少し違和感があっんたけど、今日はしっくりきた。
次は今回出演のイギリス人ダンサーERICA TRIVETTが自ら振付けした、「TABLEHEADS」。女性振付けの作品ってあまり見る機会はなかったんだけど、男性1人、女性2人のダンスは時に豊かで時に物悲しい(変なコメントだ)。このステージでは緞帳の変わりに竹を使っていて、隙間からこぼれる照明の光りがとても効果的にダンサーを照らしていた。凄く綺麗な作品だけど個人的にはもう少し短くてもいいかなとも思いました。中間部分で一瞬間延びするんだけどそこがなければ客の空気も冷めないまま終われたような気がします(個人的意見!)。
さて、この演目のあと天井が開いて1回目の休憩。イリたちの様子を見に楽屋へ。そこでいきなり今回のディレクターのALEXANDERさんにつかまる。彼はデンマークのバレエ界では重鎮的存在。何となく顔が若かりし頃のジョン・ノイマイヤー氏に似ている。彼は顔を見るなり、「よし、今日の舞台挨拶の段取りを説明するから来い!」と言って楽屋の廊下まで通し、いきなり説明開始。いやいや、イリたちからは今日は一緒に挨拶しようといわれれたけど、本当にやるんですか?と言うと「いや、一緒に踊るんだ」とか「花束を持って10分踊れ」とか冗談ばっかり。あとでイリに「これがデンマーク人」だと言われたけど、この冗談が面白いかどうかは置いておいて、とにかく彼は冗談好き。そうこうしている内にいきなり一番手前の楽屋のドアが開いて、驚愕。今回そもそもお忍びでこのイベントに遊びに来ていたパリオペラ座バレエ団の某女性ダンサーが舞台用のメイクをきっちりして、片手に水をもってウロウロしている。偶然にも彼女の事は前から知っていたんだけど、「まさか、代わりに踊るの?」と聞くと無言のイエス。完全にバカンスの顔から本番の顔。とにかく舞台挨拶の打ち合わせ最中も興奮が収まらない。こんな形で彼女の踊りを見られるとは!蜂に刺されてしまった人には本当に失礼だけど、なんか得した気分。打ち合わせ&休憩時間終了後再び会場へ。早速嫁さんにもこの一件を報告するや、嫁さんもノックアウト。「見たい!」という期待と、「彼女大丈夫かな」と心配を胸に次のプログラムへ。 ・・・長い!長いなぁ、コペンハーゲン日記は!次回へ続きます・・・。
畑中正人
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コペンハーゲン2日目レポート第3です!。休憩を挟んで上演されたのは、デンマーク人の振付家LARS KAALUNDによる「ET DUKKEHJEM/DOLLHAOUSE」。音楽はヴァイオリン、チェロ、オーボエアコーディオンによる生演奏で、ドタバタ劇やタンゴを連想させるスキのない音楽。振付はわかりやすいストーリー性と適役のダンサー選び。こういう演劇のようなダンスは初めて見たけれど、本当に面白かったし、何より笑えた。特にALEXANDRE BOURDAT、EDHEM JESENKOVICH、そしてぐっさん(RENNIE MIRRO)、この3人の男性ダンサーの面白さは反則。観客の笑うツボを心得ている。実際、観客のウケがかなり良かった。30分、一切飽きる事なく見終わった後に再び休憩(本当に休憩が好きだなぁ)。でも天井を空けたりこまめに休憩を入れるのは有りだと思った。お陰で全ての公演に集中でき
たし。そして次の公演はお待ちかねのイリ&オットーによる「PRISONERS OF FEELINGS」。前にも書いたように前日の公開リハまでどんな内容なのか自分も知らなかった。今日は2回目の観戦。前のドタバタで賑やかなステージから一変、彫刻のような彼等の体が空間を支配する。そこへ恥ずかしながら自分のピアノ曲(Period)が流れてくる。今回の構成はまず2分弱の映像と音楽がプロジェクターで投射されその画面と重なるようにイリとオットーが登場、ピアノ曲をメインとして2人が踊り、一番最後には、ARVO PARTの静かな曲で幕を閉じる。一番感慨深かったのはピアノ曲の途中に収録されている自分の両親の声。当然日本語なので会場のお客さんには意味が通じない。僕にとっては両親が僕の子供の頃の話しや、両親が子供だった頃の話しをしているんだけど、何だかコペンハーゲンに来て改めて原点に帰った感じ。この曲は自分にとって音楽を続けていくかどうか迷っていた時に演奏した曲で、録音場所もあえて地元の高校の音楽室を選び、両親の声や実家近くにある湖にいる白鳥の鳴き声などもサンプリングして使用した、自分にとってはとても意味のある曲。この大切な曲を選んでくれたイリとオットーには
本当に感謝しているし、この2人以外には踊らせたくない曲になってしまった。そして何よりこの曲をもっと世に出すようにプッシュしてくれた嫁さんの力、そして両親や音楽室のピアノを使用する許可を出してくれた高校の先生のおかげで今回の公演にこぎつけました。本当に感謝しています。
公演終了後、しばしの沈黙の後に訪れた盛大な拍手とその余韻は一生忘れる事ができません。本当に音楽をやっていて良かった・・・。そんな事をぼんやりと思っている間に間髪入れず最後の作品が。それは何とALEKSEI RATMANSKY振付の「ボレロ」。ボレロと言えば、僕らもイリの振付で日本でやったけど、ここだけの話し、イリの方が凄かった。演出もかなり凝っていたしステージの規模も違うという事もあるかもしれないけど。でも随所に「おっ、彼等の方がいいかも」と思う箇所もあったりして、なかなか楽しめた。そして前日の公開リハには出ていなかったパリオペラ座の某女性ダンサーが急遽出演した事でステージも振付けも変わった事が大きかった。本当にただただ彼女は凄かった。ステージの光沢が違う。他のダンサーももちろん凄かったけど、彼女の存在ははるかにそれを越えていた。公演終了後の盛大な拍手がその証明。全体的にも見ても個々の作品を見ても非常に質の高いフェスだった。全ての公演が終了後、出演者、振付家、スタッフ全員による舞台挨拶。光栄な事に自分もイリと一緒に挨拶させてもらった。あー、でも本当に無事初演が終了して良かった良かった。本番終了後は関係者や招待客を含めた打ち上げ。会場の上がそのままバーなので移動はなし。夜の海を望みながら久々に酒を飲んだ。その後はオットーたちと共に、居候しているアパートへ。そう、ダンサーのみんなは明日もあるからね。本当に初演お疲れ様でした!そして明日は何もハプニングがない事を願います(笑)。
畑中正人
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